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『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第18話

◆バクアゲ18「始末屋は気に食わない」◆ (監督:加藤弘之 脚本:冨岡淳広
 先斗とビュンを呼び出したキャノンボーグは、ブンブンジャーの始末を依頼。
 初回無料キャンペーンは終了を告げる先斗だが、イターシャがいつの間にやら大事なレーサーカードを手にしており、三下トリオが大変珍しく、他者を翻弄。
 「ハシリヤンに入る前、イターシャは宇宙最速のスリとしてならしたんだぜー」
 はいいとして、君たち、そんな悪役然とした立ち回りができたのか……!?
 一方、前回までは割と悪ぶっていた先斗は、実質的にカードを人質にされて仕事を請け負う事になり、紫電となって大也の前に現れると、問答無用で宇宙の始末。
 互いに銃と矢を向け合い、紫が接近戦ではまず飛び膝を当てに行くのは、キャラの特徴にもなって格好いいアクションです。
 「なぜ地球を捨てた?」
 「……おまえに関係ねぇだろ」
 「あんたの「地球を捨てた」は、子供の頃のあんたの悲鳴だと俺は思ってる」
 「…………悲鳴か。うまいこと言うじゃねぇか」
 幼くして両親を喪い、恵まれない生活環境にあった少年時代の先斗は、宇宙の始末屋たち(ヴィンに見えるものを始め複数人のシルエット)と出会って地球を離れ……
 「俺の悲鳴は、始末屋に届いてたって事かもな」
 「その始末屋ってなんだ」
 「散らかりまくった宇宙を綺麗に片付けるのが始末屋だ! 街場の喧嘩に星の喧嘩! 揉め事失せ物なんでも始末の! 宇宙で一番忙しい商売よ」
 紫はヤクザ稼業調の啖呵を切り、今作立ち上がり、運び屋・情報屋・調達屋……と完全なアウトローまではいかないも、どこか社会の裏側と繋がりがありそうなダーティーな雰囲気がスパイスになってくれるのを期待していたら、話が進むほどにそんなこと無かったのがだいぶ残念だったのですが、ここで再びアウトロー寄りの要素が盛り込まれ、上手く機能していないだけで作品の志向としては存在しているのか、しばらくするとまた消えて無くなってしまうのか(笑)
 ……まあ先斗の場合は、足抜けてして真人間になった方が良いのかもしれませんが。
 「君の悲鳴も、始末をつけたのか」
 「おう、始末屋は俺に、生きる場所をくれた。地球じゃそんなもの無かったからなぁ」
 「一人、友達が居ただろ」
 ……このタイミングでこれ、普通に考えると、脅迫では。
 …………いやすみません、映像では全くそんな事無かったのですが、書き起こした台詞を眺めていたら、あ、これ、「最近、文鳥を飼い始めたんだってな。名前は、ピーちゃんだっけ?」とか「そういえば、弟さん小学校に上がったらしいな。可愛い盛りじゃねぇか」ドンピシャだな……! と思って、本当にすみません。
 そんなわけで正気に戻って、情報屋が所在を掴み、大也が訪れる直前だった長田くんの家財産が危機に瀕するかもしれない中、至近距離で鍔迫り合う赤と紫。
 「だいたい、子供同士じゃなんにも出来ねぇんだよ!」
 「……そうだな。だから、今の俺は、聞こえた悲鳴を絶対に無視しない。誰よりも速く駆けつけて、笑顔に変える。それが、ブンブンジャーだ」
 「ご立派な事だが……地球人で俺の悲鳴を聞いた奴なんかいねぇよ!」
 「ここに居るじゃないか。余裕が無いと、聞こえるものも聞こえない。今の俺には聞こえるんだ」
 ここで大也が資産家やっているのは、“より多くの悲鳴を聞きつけ、より速くより遠くまで手を伸ばす為”だと概ね明らかになり、まだハッキリとは語られませんが、今回の喋りのトーンの感じからすると、大也は、“かつての自分”を助けようとしているタイプのヒーローといった感じでありましょうか。
 第4話における、


 「あなた達は何者? 誰に頼まれたわけでもないのに、何故こんな事を?」
 「俺は悲鳴を聞いたらじっとしていられないタチでね」
 「……本気で言ってるんだ、こいつは」

 の背景にようやく厚みがつきましたが、個人的にはこれは、もっと早く開示しておいた方が、大也の好感度に繋がって良かったように思います。
 序盤に取り上げた「悲鳴」を、追加戦士を説得するキーに用いる趣向だったのかもですが、その結果として1クール程度に渡って、大也が“いまいち情念の置き所のハッキリしない慈善家ヒーロー(唐突に道徳の教科書みたいな事を言い出す)”となり、“届け屋”という独自要素の魅力も損ねていた事を考えると、デメリットの方が大きく出た印象。
 ……後これは凄く身も蓋もない話となりますが、
 “かつて救えなかった自分”を救う為に、大富豪の資産を駆使して出来る限りの悲鳴を聞きつけ、そこへ駆けつけられる“大人”になろうとしているヒーロー
 って、それだけで滅茶苦茶格好いいと思うので(だいぶ個人的な好みと解釈込みですが)、最初からそこを押し出した方が良かったのではないかというか、今作における回りくどい見せ方が概ね巧く転がっていない状況を考えると、『ゴーカイ』や『ボウケン』辺りの雰囲気を漂わせるよりも、『サンダーバード』×『ゴーゴーファイブ』みたいな方向性で突っ走った方が合っていたのではないかな、と。
 勿論そこは、どういったものがウケそうか、といった市場動向も考慮した上になっているのでしょうが、どうも今作、「真芯にあったヒーロー像」に対して「モチーフに基づく装飾の組み合わせ方」が上手くいっておらず、それが基本設計を1話1話のエピソードにおいて使いこなせていない部分に繋がっている感があります。
 根本中の根本としてはやはり、「届け屋」を通してそのヒーロー像を出力する事にこだわって欲しかったのですが、話作りを楽にして早々にそれを放棄してしまったのは、大きな躓きになったなと。
 「…………だいっ嫌いだ……! おまえみたいな、綺麗事言う奴……けどな……あの頃、おまえみたいな大人がいりゃあなぁ」
 先斗は大也に向けていた矢を空に向けて放って吼え、戦闘態勢を解除するが、そこに長田さん一家と従業員一同を人質に取った ブンブンジャー 三下トリオとソードグルマー二代目が姿を現し、人質を見せつけながら始末の執行を求めるサンシーター、今回はやたらと邪悪ですが、寝てる間に、改造された……?
 「てめぇらその地球人から離れろ!」
 「「「ええっ?!」」」
 「なんで始末屋が怒ってるの?」
 と思ったら、全くの偶発的出来事で、いつものノリに(良くも悪くも)戻りました(笑)
 ハシリヤンへの反抗を見せる先斗に対して、ソードグルマーが見せしめとして長田家を抹殺しようとすると、ビュンディー、そして、ハシリヤンの動静を窺っていたブンブンジャーが社員一同を救出し……タイミング見計らって恩を売ったたみたいな流れになったのも、偶発的事故だと思いたい。
 ついでに調達屋が大事なカードを奪い取って返却すると(もはや届け屋よりも調達屋の方が仕事しているのでは問題)、怒りの先斗はハシリヤンに宣戦布告を表明。
 「もともと気に食わなかったんだよ……俺達の宇宙で! デカい顔しやがって。俺はハシリヤンをぶっ潰す!」
 「ノンノンノン。地球を守るヒーローにでもなるおつもりですか?」
 そこにキャノンボーグが不意打ちを仕掛けるが、先斗はあっさりガード。
 「俺は地球なんかどーーでもいい! たった1人のダチと、その家族を守りてぇだけだ! 二度とあんな真似できねぇように、てめぇら一人残らず始末する!」
 「最っ高の爆上げだな、始末屋!」
 「あぁん?」
 「俺が依頼人だ。俺たちと一緒に戦ってくれ」
 サブタイトルで明言してしまいましたが、概ね、“ハシリヤンが気に食わない”ので手を組む事になり、私憤に基づき稼業なりの仁義を通す男としてムラサキの始末屋が加入。さほど新鮮味のある立ち位置ではなくカオス具合としては物足りなさも出ましたが、今後、キャラクターの横の関係性による化学反応を期待していきたい…………まあ現状、そこが今作で最も不安なポイントなわけですが!
 6人でのフル名乗りから集団戦に突入し、主題歌バトル愛好家としては、今作のこの姿勢は、好きなところです。
 「始末屋!」
 「ここからは一切標識なしだ!」
 ソードグルマー二代目の海老反り大回転Mパワースラッシュに対して、ダブルタイヤキックを浴びせた赤紫は、二人並んでの爆上げシューティングでフィニッシュ。
 ハイウェイ光線を浴びたソードグルマーが巨大な伝説の剣と化すと、ブンブンキラーロボが装備しての二刀流となり、成る程、クラシックのアレンジデザインだったのかと納得しましたが、三下トリオがロボに乗り込んだ事で、場の雰囲気は一気に緩く(笑)
 二刀流にBナイトで立ち合うが、伝説の剣によるオールレンジ攻撃で形勢不利となったところで、巨大ビュンディーが参戦。スタンドアップすると翼を広げてビュンビュンマッハーロボとなる飛行仕様で、フォーミュラカーと戦闘機を結びつけ、空中からボウガンを撃ちまくる攻撃手段がえげつない。
 「すまない! ビュンディー!」
 「タイヤ交換の借りは返した」
 碧空を自在に飛び回るマッハビュンディーは、伝説の剣によるサイコミュ攻撃を華麗にかわすと、逆にブンブンキラーロボにぶつける定番の攻略から、ビュンビュンメガランチャーでまた来週~~~。
 ……1から10まで、ブンブンジャーの戦力を強化しただけだった伝説の剣ですが、果たして改造隊長に、ここから更に技術ツリーを伸ばしていく秘策はあるのか。
 余裕を崩さない暗躍系ではありますが、ここから9月の新展開まで居座るのは長い気がするので、個人的には、夏休み入る前の卒業が賞味期限かなと……。
 ブンブンとビュンディー、先斗と長田はそれぞれ面と向かっての再会を果たし、もともと長田のものだったレアカード、先斗は「紛れていた」と口にしていますが、実際には「思わず盗ってしまった」――その自責の念が地球を捨てる最後の一押しになった――のかもとは思わせるところで、そんな先斗に対して「ずっとおまえを探していた」と長田が言う事で雪解けは果たされ、先斗とビュンディーは長田家で歓迎を受ける事に。
 ……この世界の人たち、タイヤ人間を受け入れたのを契機に、割とごつい機械生命体もまあいいか……みたいな感じ(笑)
 「飲ませてもらおう、地球のお茶とやらを」
 そしてビュンディーにちょくちょく赤い彗星が憑依するのは、(ブンブンの)3倍速いからなのでしょうか。
 大団円の一方、細武はどこか(ISA上層部?)に連絡を取っており……
 「宇宙から、新たなブンブンジャーが現れました。かなり素性が複雑ですが、ただ、ハシリヤンの内情には詳しそうです」
 まあそこ大事ですよね、でつづく。
 EDは今回は従来通りのバージョンで、映像の完成度が高い分、6人目を加えにくそうですが、完全新撮してくるのか、はたまた合成で強引に足してくるのか、或いはミニコーナーだけしれっと参加する形になるのか。
 次回――七夕合わせ回のようですが、なんと『キラメイ』以来の竹本昇監督復帰だそうで、どうなるか楽しみです。