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闇夜の烏は人手が欲しい

電子戦隊デンジマン』感想・第9-10話

◆第9話「死を呼ぶ怪奇電話」◆ (監督:竹本弘一 脚本:上原正三
 見所1は、巨大な黒電話の受話器に空手チョップを浴びせる赤城。
 見所2は、背広姿の紳士として地球に降り立つヘドラー将軍。
 割と軽率に地球人偽装が解禁され、その調子でドンドンお願いします!
 ベーダー一族は、美術展に落選を続ける貧乏画家(陰惨路線)に目を付けると、その憎しみを利用して著名画家に地獄の電話をかけさせ、電話を受けた画伯の部屋に、突如として出現する巨大な黒電話。
 受話器に向けて怨念を込めた「地獄へ落ちろ」を繰り返す青年と、人間を襲う巨大な黒電話、のギャップ��大変シュルレアリスティックで、苦悶を絞り出す青年と、電話の中に呑み込まれていく画伯。
 「どうやって殺したんだ?」
 「あなたはダイヤルを回す。そして呪文を唱えるだけ」
 自室に鳴り響く電話のベルに怯えを見せる青年の前に、突如としてケラーが立っているのが、悪魔的存在を象徴して好演出であり、今作は『デンジマン』なので「ベーダー怪物」が介在していますが、狂気漂う陰鬱な空気の中で“人の悪意”と“(トンデモ)テクノロジー”が組み合わさったところに死が生まれるのは、なんとなく円谷の『怪奇大作戦』を思い出す路線。
 金と憎しみに目がくらむ男は、次なる電話をかけ、二人目の犠牲者が発生。
 「2人とも電話に出たあと殺されている」
 「じゃあ……電話が犯人」
 「アホか! 電話が人殺しするかよ」
 黄山と青梅のやり取りに


 「昨日運び込まれた椅子が無いんですよ」
 「馬鹿! 椅子が人殺しをするか」

(『ロボット刑事』第9話「電気椅子スパイ!!」(監督:折田至 脚本:上原正三))

 を思い出したのは私だけではないと思いたい。
 「……ベーダーの仕業だ!」
 赤城らは、死亡した2人と関係の深いもう1人の画家も狙われるのでは、とガードに張り付き、出現した巨大黒電話に立ち向かうが、正体を現した電話ラーのダイヤル回転による重力操作攻撃に翻弄され、電話線経由で逃げられてしまう。
 地獄の電話により間接的な殺人に手を染めた青年画家は精神に変調を来し始め、加害者の恐怖を掘り下げると共に、そこへタイミングを計って現れるケラーの魔女ぶりが強烈で、今回はとにかく、ケラーさん(洋服)の存在感と演出が光ります。
 もはや後戻りはかなわない青年により、自動車電話を利用して再び狙われた画伯は間一髪でデンジマンに救われる一方、妹が桃井の生徒であった縁から、桃井の美しさに魅せられた青年は、桃井に絵のモデルを依頼。その声に聞き覚えを感じた桃井は、モデルの一件を承諾する電話で青年の声を入手すると、既に入手してあった地獄の電話と比較し、その声紋が一致する事を確認する……。
 ……なにぶん、第1話で恩義あるコーチを殺害されているので、判断がシビア。
 画伯の家にいつの間にか上がり込んだりとかはありましたが、調査活動は今のところ、デンジ星由来のオーバーテクノロジーに、なんらかの研究職らしかった黄山の存在で説得力をブーストする形になっており、古今東西の大衆小説など科学者(技術者)系ヒーローは珍しくないですが、黄山の前職が効いているのは、序盤の印象的なところ。
 桃井は画家のアトリエでモデルを務め……その背後に顔を出すケラーーー!!(笑)
 予告からはジャンボ黒電話のインパクト勝負かとばかり思っていたら、蓋を開けてみると紛う事なきケラーさんプッシュ回。
 「将軍、即刻死刑」
 青年画家が、ベーター好みの陰鬱で根暗な(後の藤堂武史めいた)画風を捨て、地球人の美しい女、それもよりによって桃井あきらをモデルとした事を女王陛下は裏切りと判定し、青年に遅いかかかる電話ラー。
 「俺はやめんぞ! あきらさんを描くんだ!」
 執念を見せる青年は、一度はデンジピンクに助けられるも、ケラーの投げナイフがぐさっと突き刺さって因果応報に倒れ、実質2人殺しているので相応の結末となりましたが、人間関係を接続する為に設定された妹の境遇は悲惨な事に。
 5人揃ったデンジマンは逃げる電話ラーを取り囲むと、大きく飛び上がっての空中前転ジャンプが追加されたフル名乗りで、そのまま集団戦に突入し……当初から気になっていたのですが、何故、足踏み前ダッシュ技(無敵時間あり)が、「デンジジャンプ」なのか(笑)
 ……映像を見る感じ、短距離ワープで空間を跳躍してるから……?
 赤はハンマーパンチで戦闘員を真っ二つに割り、青はデンジドリルで翻弄し、緑はデンジクロスカウンターで連続パンチを叩き込み、ピンクはデンジサンダー(?)で投げ飛ばし、黄はデンジスープレックスでパワー系の道をひた走り、最後は一同デンジパンチの乱れ打ち。
 残る電話ラーのダイヤルバルカンを回避すると、デンジタワーからの連続蹴りが炸裂し、長い尺でのアクロバットな戦闘シーンは、ここまでのデンジアクション大盤振る舞いで、見応え充分。
 追い詰められた電話ラーは、119番攻撃でデンジマンを炎に巻くもデンジジャンプで脱出されると、続けて110番に電話をかけ、事象変換技による逃走を目論むが、デンジブーメランのカウンターを真正面から喰らって、スパッ!
 巨大電話ラーは、ダイヤル重力操作でデンジロボをひっくり返し、バルカン攻撃。更に電話変化と電話分身の術でデンジロボを翻弄するが、満月斬りによって力任せに両断され、でででででーん!!
 ナレーション「ミヤコは、おじの家に、引き取られる事になった」
 妹の扱いは力技で処理されると、桃井は別れ際に兄の遺した肖像画を贈られ、いや、それ、貰っても超困るよ……?!
 ……まあ桃井さん、慣れた感じで笑顔で受け取っていたし、冒頭では、妹をダシにした兄からのディナーの誘いを軽くあしらっていたりしたので、色々と場慣れしていそうではあります(笑)
 貧困と憎悪が殺人を招く陰惨な展開を、ジャンボ黒電話の映像で相殺する作りでしたが、青年画家の怨念と苦悩にケラーの存在感、人間を呑み込む黒電話のインパクトのどちらも面白く、両者のバランスも取れて見応えのある一本でした。
 また、青年がそれまでの画風を捨てて桃井をモデルにと頼む事で、そういった魅力の持ち主、として桃井のヒロイン力(客観的モテ度)が上昇したのは細かく良かったところ。

◆第10話「魔法料理大好き!?」◆ (監督:広田茂穂 脚本:上原正三
 「ハンバラーは極めて原始性が強く、一度油で揚げて孵化しやすくしてやる必要があるのです」
 堂々たる態度で、わけのわからないことを言う将軍が揚げたてのハンバーガー型の卵を孵化させると、誕生したのはベーダー09ハンバラー(頭部はハンバーガーそのもので、胴体にケチャップとマスタードがついているのがお洒落)。
 「儂と一緒に来い。ハンバーガーキャンペーンを展開するぞ」
 本日も将軍自ら作戦の陣頭指揮に立つと、ベーダー一族は地球で10円ハンバーガーを売りさばき、ワゴンの中でハンバーガーを焼く将軍と、売り子をするミラー&ケラー、女王陛下の御為ならば地道な工作活動で地球人に笑顔でへりくだる事をいとわず、よく言えば鉄の忠誠、悪く言えば深刻な人手不足。
 ナレーション「ハンバラーは、魔術師である。彼が発する匂いを嗅ぎ、音を聞くと、人々は、ヘドロハンバーガーを美味しいと思うようになるのだ」
 背後で鳴り響いていたハープの音色に説明がつけられると、ヘドロバーガーを食べた子供たちを次々と襲う、色覚異常
 空手教室で空腹を訴える子供たちの為に黄山がカレーを振る舞うが拒絶され……溜まり場その2として登場した喫茶店風味の施設、壁にアスレチックとかボクシングとか貼ってあり、背後をモブが行き来しているところを見るに、クラブ内の食堂のような設定でしょうか(黄山の漢方教室に無理があるので、食堂担当にスライドされた?)。
 「気に食わないな……俺の作った料理が食べられないっつうのか」
 料理の戦士のこだわりを覗かせる黄山だが、子供達はハンバーカーに執着して飛び出していき、どうも様子がおかしい、と後を追った青梅は、ハンバーガーキャンペーンを発見。
 「10円ハンバーカー……本当だ。成る程、物価高に挑戦か」
 なんか納得してしまった青梅は行列に並ぶとまんまと魔術にかかり、赤城らは、連絡の途絶えた青葉が、熱に浮かされたような表情でバーガーを貪り食べている姿を目撃。
 「様子が変だ……目が据わっちまってるよ」
 え……もしかして……アンパン(隠語)……中毒?!
 「こいつのせいだ。どうやらベーダーが動き始めたぞ。スパークだ」
 幸い、いつも食べているアレではなく、噂のハンバーカーに問題がある事を察知するデンジマンだが、バーガーワゴンは一当たりすると逃走。
 尊い犠牲者となった青梅は、バーカー以外の食事を拒絶すると香水の匂いなどに嫌悪感をむき出しにしてうなり声をあげ、虚ろな表情で暴れ回る姿が、大変はまり役(笑) ……いつでもアクションで取り返せる安心感もあってなのか(所属がJACなので、他のキャストより無茶を頼みやすい傾向もあるのでしょうが)、扱いに容赦がありません。
 同様の異変が子供達をも襲っており、デンジマンが青葉を拘束してデンジランドに移送する中、ベーダー一族は作戦の第二段階を発動。
 前回の、現地人まで抱き込んでようやく美しい絵を描く画家を殺害に続いて、ワゴン販売から小学校の給食へ進出を、「スケールアップ」と称する姿に涙を禁じ得ませんが、手持ちの石は、ウミツラー召喚で使い果たしてしまいました。
 監視役だった緑川が囮に引っかかっている内に、将軍らは小学校への潜入に成功し、給食カートを自ら運ぶヘドラー将軍、全ては女王陛下の為なればこそ。
 「デンジシャワーだ。デンジシャワーをするんだ」
 刑事スキルを活かす筈が尾行と再追跡に大失敗した緑川から救援要請が入るも、禁断症状で暴れる青梅から目が離せない赤城らだが、アイシーの助言であっさり回復。……悪い意味で『デンジマン』らしいざっくりした解決になりましたが、その犬は明らかに、最も恩を売れるタイミングを見計らったいたぞ。
 5人揃ったデンジマンが教室へと乗り込むと、だいぶ雑な成り行きで、レッドと将軍が初激突。
 劇中初の立ち回りを魅せた将軍はミラー&ケラーと撤収し、完全に見捨てられる形になったハンバラーは海岸線で戦闘員と合流して反撃に転じるが、振り向くなー振り向くなー振り向くなー。
 かなり派手な爆弾攻撃を挟んで、フォークの殴打を��けまくるデンジマンだが、油断したハンバラーにスティックをぶつけるとブーメランで逆転勝利。
 巨大戦では、鉄球と頭突きとエコ大胸筋が激しくぶつかり合った末、割とざっくり満月斬りで両断され、悪魔のヘドロハンバーガー作戦は水泡に帰すのであった。
 子供たちもデンジシャワーで無事に回復し、シャボンラー事件に続いて高性能なデンジシャワーですが、そもそも電子戦隊がベーダー一族のヘドロ攻撃を念頭に置いた対抗戦力だと考えると、状態異常の回復能力を重視しているのは、必然ではあるのかもしれません。
 子供たちを暖かく見つめる赤城らでつづき、次回――今度はタイヤが空を飛ぶ。