モトローラは7月3日、新スマートフォン「motolora edge 50 pro」シリーズを発表した。
撮影:石井徹
老舗携帯電話メーカーのモトローラが日本市場で急速な成長を遂げている。
7月3日の新製品発表会に登壇した仲田正一社長は、2023年度の国内の出荷台数ベースで前年比135%増を記録し、SIMフリー市場でシェア3位に浮上したと明らかにした。
この急成長の背景には、同社の大きな戦略転換がある。
急成長の裏にある「通信事業者との連携強化」
アメリカと南米に強いグローバルメーカーだ。
撮影:石井徹
モトローラは、1928年に設立されたアメリカの通信機器メーカーで、世界初の携帯電話の商品化など、モバイル通信の歴史に深く関わってきた企業だ。
現在は中国・レノボグループの一員として、スマートフォン事業を展開している。北米ではシェア3位、中南米ではシェア2位を獲得するなど、米州市場で一定の地位を築いている。
近年は、アジア太平洋地域を新たな成長市場と位置づけ、日本やオーストラリアなどで積極的な商品展開を進めている。
国内市場では2023年、出荷台数ベースで135%の成長を果たした。
撮影:石井徹
同社は一時期、オープンマーケット(いわゆるSIMフリー市場)に特化していたが、2023年以降は通信事業者と提携して販売を強化する方針に転換した。
具体例として、2023年7月にはMVNO(格安SIM)大手のIIJmioと手を組み、折りたたみスマホ「razr 40 ultra」を投入。
さらに、2023年12月にはソフトバンク独占販売でより廉価な「razr 40s」を発売した。
今回発表されたedge 50シリーズでも、この戦略が継続されている。
edge 50s proはソフトバンクでのキャリア独占販売、edge 50 proはIIJmioでのMVNO独占販売という構図が採用された。
edge 50 proをオープンマーケット版として発売。そのマイナーチェンジ版の「motorola edge 50s pro」をソフトバンクで独占販売する。
撮影:石井徹
ソフトバンクとの協力関係はサブブランドのY!mobile(ワイモバイル)ブランドにも及んでいる。
6月28日には「moto g64 5G」をオープンマーケット向けに発売し、7月4日には同機種のワイモバイル版「moto g64y 5G」を発売する。フラグシップからミッドレンジまで機種まで、幅広いユーザー層へのアプローチが可能となっている。
ワイモバイル版の「moto g64y 5G」は限定カラーが1色増えている
撮影:石井徹
仲田氏は「パートナーシップの強化が重要」と強調する。「どれだけ我々の方を向いてコミットしていただけるかというパートナーシップの深さを重要だ」と述べた。
この発言は、モトローラが独占販売契約に単なる販売数字の向上以上のものを求めていることを示している。
パートナーとの深い協力関係を通じて、市場での存在感向上、日本市場特有のニーズへの適応、そして長期的な成長基盤の構築を目指している。
急速充電が特徴のmotorola edge 50を投入
仲田氏は商品戦略について、プレミアムモデルの「razr」シリーズ、ミッドレンジの「edge」シリーズ、そしてスタンダードモデルの「moto g」シリーズの3つのラインナップを強化していく方針を挙げている。
今回発表したmotorola edge 50 proとmotorola edge 50s proはボリュームゾーンのミッドレンジの機種だ。edge 50 proの直販価格は7万9800円(税込)。
ブランドの中核のミッドレンジモデルedgeシリーズを投入した。
撮影:石井徹
edge 50 proとedge 50s proは、モトローラの最新技術を結集した端末だ。一番の特徴として挙げられるのが、急速充電システムだ。
125Wの超急速充電技術により、1%から100%までわずか19分で充電が完了する。
充電時間を気にする必要がなく、バッテリー切れが気になって仕事が手につかなくなる不安を解消する機能と言えるだろう。
motorola edge 50 pro。
撮影:石井徹
この機能は、ソフトバンクの商品戦略とも親和性が高い。
ソフトバンクは2022年から「神ジューデン」として急速充電機能を特徴としたスマホを展開している。edge 50s proはその4機種目として、モトローラ初の神ジューデン対応機種として選ばれた。
カーブディスプレイを採用し、スタイリッシュな見た目に仕上げた。
撮影:石井徹
カメラも前機種の「edge 40」(2023年7月発売)と比べて改善されている。
5000万画素のメインカメラに加え、1000万画素の3倍ズームカメラ、1300万画素の超広角カメラを搭載。AIによる画像処理を通じて、暗所でのフォーカス精度向上や手ブレ補正など、より鮮明な撮影ができる。
セルフィー用の正面カメラは5000画素に向上している。
撮影:石井徹
日本市場向けのローカライゼーションも徹底している。FeliCaを搭載し、電子マネーやSuicaなどの利用に対応。マイナンバーカードのスマホ搭載にも対応予定だ。
また、IPX5/IPX8等級の防水機能も備え、日本の高い防水ニーズに応えている。さらに、日本人の好みに合わせた色調整や、細かな配慮がなされている。
折りたたみスマホの新モデルも投入予定
モトローラ・モビリティ・ジャパンの仲田正一社長。
撮影:石井徹
モトローラは、日本向けの製品ラインナップの強化も計画している。特に注目されるのが、折りたたみスマートフォン「razr」シリーズの新モデル導入だ。
仲田氏は「razrシリーズは非常に重要なシリーズだと思っておりますので、ぜひ日本に導入したい」と明確に導入する意思を示している。
モトローラが7月13日(現地時間)にグローバル発表した折りたたみスマホ「motorola razr 50 ultra」。
出典:モトローラ
仲田氏は「日本における夏あるいは年末~春商戦みたいなところを、しっかりと捉えられるようにタイミングを合わせていきたい」と述べている。
この戦略の背景には、日本市場特有の要求事項があると考えられる。
例えば、おサイフケータイ(FeliCa)対応などは、ハードウェアの改造や認証作業も必要で一定のリードタイムが必要となる。
実際、razr 40 ultraとrazr 40は2023年6月にグローバルで発表され、日本では7月に発表されたが仕様の大部分はグローバル版と同じだった。一方、遅れて11〜12月に発売されたrazr 40はおサイフケータイに対応している。
razr 50シリーズもこうしたローカライズ対応が期待したいところだ。