IVS会場内に初めて本格的に設けられた託児所。看板を見て訪れる親子連れも多かった。
撮影:土屋咲花
2024年7月4~6日に開かれた日本最大級のスタートアップイベント「IVS2024 KYOTO」は今回、女性の参加比率30%を目標に掲げた。
起業家や投資家は男性の割合が高く、スタートアップに関わる女性の少なさが指摘されてきた。こうした中で2024年は、多様性をテーマにしたステージ「EmpowerHER LOUNGE」を新しく設けたほか、元助産師が立ち上げたスタートアップによる託児サービスも提供した。
託児のお陰で「参加できた」
託児サービスでは、IVSの会場内をお散歩する時間も設けた(保護者の許可の上、撮影しています)。
撮影:土屋咲花
IVSでは今年、託児サービスを本格的に実施した。
運営を担ったのは、産後ケア領域のスタートアップ・Josan-she’s(ジョサンシーズ)。会場の京都パルスプラザ内の一角に託児所を設けたのに加え、夜間は深夜0時まで「ザ ロイヤルパークホテル 京都三条」で0歳から未就学児の託児を受け入れた。ジョサンシーズによると、深夜帯までの対応を用意できたのは、託児所を設けた場所がホテルだったためだ。必要なら子どもの寝かしつけをし、親はホテルに戻ってきたらそのまま就寝もできる仕組みを整えた。
生後3カ月の長男を預けた女性は、夫とともにIVSに初めて参加した。夫婦で投資会社を経営しており、新規事業の立ち上げにあたっての情報収集を目的に訪れたという。
当初、長男の預け先が見つからず、女性は参加を諦めようとしていた。
「家族の都合がつかず、私は行くのをやめようと思っていたのですが、ガイドブックで託児があるのを見つけて参加することができました。最初は不安もあったが、きれいな場所で(利用して)よかった」
と話した。
ジョサンシーズの渡邊愛子代表は
「出産されたばかりの登壇者にも『来年は一緒に来れると思えた』とポジティブな声をいただいた。誰もが懸念なく参加できるイベントになればうれしい」
と手応えを話し、要望があれば来年以降の継続もしていきたいと、意欲を示した。
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「キャリアと子育て」テーマのセッションも
ANRIの佐俣アンリ代表パートナーと、STORES取締役の佐俣奈緒子氏が夫婦でセッションに登壇した。
撮影:土屋咲花
新設の「EmpowerHER LOUNGE」では、子育て中の夫婦の働き方に焦点をあてた講演が開かれた。
ベンチャーキャピタル・ANRIの代表パートナーである佐俣アンリ氏と、妻で店舗向けのデジタルサービスを提供するSTORES(ストアーズ)取締役の佐俣奈緒子氏が、共働き夫婦として多忙を極める中で、どのように3人の子どもを育てているのかを明かした。
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2人は「家族を拡張した」という表現で、シッターに頼る子育てをしてきたと説明。
シッターは子どもたちと長い時間を過ごすことで家族同然の関係になり、
「子どもたちは、シッターが仕事で自分たちの面倒を見てくれていることにしばらく気付いていなかった」(奈緒子氏)
という。
アンリ氏は子育てをスタートアップの経営や事業運営になぞらえ、
「経営者(=夫婦)は定���的に1on1をすべき。シッターに任せてデートに行き、子育てについてすり合わせをしている」
と紹介した。
IVSによると、2024年は3日間で1万2000人が訪れた。女性の割合は24%。目標の30%には届かなかったものの、前年(約20%)と比べて増加した。