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株式市場が上昇しても下落しても、経済が破綻してしてしまっても、また1つのセクターのトレンドが極端に悪くなっても、臨機応変な戦略を採用すれば事なきを得ることができるだろう。
それこそが、カタリスト・システマティック・アルファ・ファンド(Catalyst Systematic Alpha Fund)(ATRFX)が目指しているものだ。
これまでのところ、このファンドは並外れたリターンを達成しており、モーニングスター(Morningstar)のマルチストラテジーカテゴリーにおいて、5年間で他のファンドの99%を上回っている。カタリスト・システマティック・アルファ・ファンドは過去5年間で年率16.22%の総リターンを達成し、2024年に入ってからのこれまでのリターンは10.31%となっている。
カタリスト・キャピタル・アドバイザーズ(Catalyst Capital Advisors)の最高投資責任者で、ATRFXのポートフォリオマネージャーであるデビッド・ミラー(David Miller)氏はこのファンドの目的について、すべての主要資産クラスにわたって世界的な分散投資を維持することだと述べている。
これは、ほとんどの投資家が思い浮かべる堅実な分散投資ポートフォリオからすると、少し無理があるように聞こえるかもしれない。
ミラー氏によれば伝統的な資産運用の方法は株式を購入する、あるいは債券に投資することだという。古典的な長期投資のポートフォリオ「株式60/債権40」の構成は、ここから来ている。そして、その背後にある考え方は、株式で成長を獲得し、債券で安定した収入源を維持することで、リスクとリターンのバランスをとることができるというものだ。リスク許容度やリタイアまでの年数に応じて、その構成がどちらかに傾くこともある。
もう1つのアプローチは、異なる資産クラスや戦略に視野を広げることだ。ATRFXの場合、これは通貨、株式、商品、債券に投資することを意味するが、直接的な方法で投資するわけではない。その代わりに裁定取引戦略を採用する、モメンタムや金利動向に乗る、あるいは市場が不安定なときはただ傍観するなど、あらゆる方法を用いているのだ。
このマルチストラテジーファンドの各要素を押し引きしている基本的なレバーは、BNPパリバ(BNP Paribas)証券クオンツ投資戦略チームの数学とファイナンス学の博士号を有するメンバーによって構築されている。
私たちは5年ほど前にBNPと提携し、彼らのマスター戦略、つまり最高のクオンツ戦略をすべて組み合わせたものを作ってもらえないかと依頼したのです。(ミラー氏)
Business Insiderが入手した、このファンドの最終的な構成に関する詳細な情報を以下で紹介する。
通貨
現金は資産の王様であるが、その現金からさらに高い利回りを得ることができれば、より望ましい運用となる。アメリカではここ数年間、金利の上昇によって現金の利回りは非常に良いものとなっている。平均的な投資家は、現金をマネーマーケットファンドまたはCDに投資して5%近くの収益を得ることで、その恩恵を受けてきた。
さらに一歩進んだ方法として、通貨間の金利裁定取引というものがある。これは金利の低い国の通貨を見つけてその通貨で借り入れを行い、その後、金利の高い通貨で貸し出しを行うというものだ。
平たく言えば、日本の銀行に行って0.1%の金利で100万ドル相当の円を借りたら、次にアメリカの銀行に行ってそれを預金し、5.5%のリターンを得るようなものだ。これはかなり巧妙な取引であり、概念的にはこのファンドが行っていることそのものだとミラー氏は話す。このような裁定取引は世界の主要通貨で行われ、各通貨の金利の違いから差益を得ているとミラー氏は指摘する。
株式
このファンドのグローバルの株式へのエクスポージャーは、S&P500のリターンを上回ることを目指している。
その核となるのは、実にシンプルなコンセプトだ。株式は、ボラティリティが低い時や通常の時は好調だが、ボラティリティが高いときはひどい有様となる。結論から言えば、悪い時に何故わざわざ手を出すのかということだ。
これを実際に実行する方法は、ボラティリティの尺度として使用されるVIX指数が21~22を下回るときに、S&P500指数先物をロングポジションで持つことである。ATRFXは、VIXがこの基準値を下回るとVIXのショートポジションも持つ。また、指数が200日移動平均を上回るトレンドにあるときは、欧州株(EURO STOXX 50)と日本株(日経)の先物契約を保有し、200日移動平均を下回ると手仕舞いする。こうすれば、指数が上昇するときはそれに乗って、下落する時は傍観することができる。
コモディティ(商品)
コモディティはあまり良い投資対象ではないとミラー氏は話す。そのため、現物に投資するのは、この資産クラスへのエクスポージャーを得る理想的な方法ではない。その代わり、コモディティが必要とする保管コストに投資するのだ。これが「カレンダー・スプレッド」と呼ばれる戦略だ。
これを実際に実行するには、ブルームバーグ・コモディティインデックス(Bloomberg Commodity Index)(BCOM)の個々の構成要素について、1カ月以内に満期を迎える直近の先物契約を売るという戦略を取る。次に、それらのコモディティの1年先物契約を購入して、差額から利益を得る。
「コモディティキャリーは、弱気相場で非常に好調な傾向があります」とミラー氏はいう。
コモディティキャリー戦略が最も好調だった時期の一つは2008年��、言うまでもなく、その年は株式にとってひどい年でした。そこで私は、株式市場が低迷しているときにうまく機能し、株式のリスクを相殺できる戦略を探していたのです。
債券
次にこのファンドの債券の部分だが、金利はアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)によって決定されるため、トレンドはしばらくの間は一方向に安定的に動き、その後、反転したり、急激に方向転換したりするため、取引はかなり順調に推移しているとミラー氏は指摘する。
このファンドは、債券先物契約の価格が200日移動平均を上回っている場合は債券をロングで持ち、下回っている場合はショートで持つというシンプルな方法で、債券先物契約を取引している。