本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

リカバリー・カバヒコ/青山美智子

団地の園にある古びたカバのアニマルライドをモチーフにした、ハートウォーミングな連作小説である。アニマルライドにはリカバリー・カバヒコという異名があるが、カバヒコの、自分の悪いところにあたる部分を撫でると回復するという都市伝説があり、これが重要なテーマ。


主人公となるのは、中学の時は成績が良かったのに進学校に入学して落ちてしまった高校生、失恋ストレスから耳管開放症を病んでいる女性、リレー選手に選ばれるのが嫌さに足を怪我したふりをしていたら本当に足を悪くてしまった小学生、ママ友グループの圧力に辟易している元カリスマ店員などで、みな心に葛藤を抱えて悩んでいるが、古びたクリーニング店でカバヒコのことを聞いて、癒やされに行くのである。


SF的な話ではなく、立ち直るきっかけは自分自身だったり、それぞれの周りにいる人のちょっとした言動だったりで、葛藤と再生を描いて読後感良し。最終編ですべての謎が解き明かされるのは、青山作品のいつものパターンかな。


関係ないが、以前にテレ東系で放送されていた「空から日本を見てみよう」にアニマルライドを採り上げるコーナーがあり、くもじいが「晴れでも雨でも嵐でも、いつも笑顔の公園アニマルズ」とナレーションしていたのを思い出す。