茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(日雇)(574)『HOW TO BLOW UP』、あるいは投票以外の方法

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(日雇)(574)『HOW TO BLOW UP』、あるいは投票以外の方法
加藤匡通
七月×日(月)
 映画の情報を熱心に探さなくなって久しいので、映画館でびっくりすることがある。この前はつくばのシネコンでパイブラインを爆破しようとしている予告編に驚愕した。『パイプライン爆破法』の映画化としか思えない。家の布団の横の本の山の中にあるやつだ。けど今時あれを映画にするか?しかし予告編に出た原題は『How to Blow Up a Pipeline』!まじか!日本公開名は『HOW TO BLOW UP』だった。
 ほかの映画を見るつもりが時間の都合でこちらを見た。目当ての映画の時間が合わずに別の映画を見ることはよくあることだ。
 それぞれが切実な理由からパイプライン爆破計画に加わる群像劇だが、これが大当たりだった。時制を操作しながらパイプライン爆破に向けて進む作りで、最後まで緊張が途切れず楽しませてくれる。娯楽映画としてとてもよくできている。荒れた画像は七十年代の映画を意識しているのかと思ったら、今時十六ミリフィルムで撮っていて、さらに好感度は上がった。もう一度見たいと思ったが、残念ながらつくばでの上映は二週間だけ、しかも二週目に夜の回はなかった。
 映画としてよく出来ていたが、僕が好感を抱いたのには別の理由もある。かつてならパイプライン爆破の目的は資本主義への攻撃だったろうが、現在ではそれが環境破壊への抗議へと変わっている。似たような映画というと、例えばクライマックスが金融街爆破の『ファイト・クラブ』が浮かぶが、この映画は極めてマッチョでカリスマ支配、しかも男性ばかりの運動体の映画である。公開当時は違和感を感じつつも崩れ落ちるマンハッタンに快哉を叫んだものの、今では違和感の方が圧倒的に強い。
 あるいは『ザ。イースト』。こちらは運動体への潜入捜査のはずがミイラ取りがミイラになる話で、結末は大変気に入っている。しかしこちらも若い女性が年上の男性に導かれ、恋愛関係となる話である。いやいや君たち権力勾配にそんなに無自覚でいいのか!と映画館で冷や冷やした。
 それで言えば『ブレッド&ローズ』もそうだ。移民労働者の女性と移民労働者を組織化しに来た労働組合オルグが恋に落ちる話だ。こちらはもっと権力関係がはっきりしている。それ駄目だろ。何やってんだケン・ローチ!このテーマを何故こういう物語にした?
 こういった要素が『HOW TO BLOW UP』には少ない。そもそも計画に明確な指導者はいない。中心的な人物はいるが、役割としては調整役に見える。男女のカップルもいれば同性のカップルもいるし、単身者もいる。年齢層は若いが、民族もばらけている。そうした要素をうまく取り込みながら娯楽映画としてうまくまとめているのだから大したものだ。
 多分またどこかでかかるだろう。これだけの映画なら、上映はされるはずだ。
 都知事選の結果はある意味予想通りではあって、とはいえ落胆はする。選挙を明らかに嘲笑している候補者たちもいて、アナーキストが言うことではないような気がしなくもないが、気分は良くない。東京の話だからと他人事のように受け止めることもできない。それでも、これはたかが選挙の話である。政治的な意見の表明の仕方は、当たり前だが投票だけではない