ネットフリックス・ハウス。
Netflix
- ネットフリックス(Netflix)は、2025年に最初の「��ットフリックス・ハウス」をアメリカのテキサス州とペンシルベニア州にオープンする。
- ネットフリックスはディズニーのやり方に倣って、没入型の体験を作ろうとしているようだ。
- 次は「ネットフリックス・ワールド」か?
「模倣」は「称賛」の最も誠実な形態だ。ネットフリックスに聞いてみてほしい。
ネットフリックスは2025年に最初の「ネットフリックス・ハウス」をアメリカのショッピングモール —— ガレリア・ダラス(Galleria Dallas)とキング・オブ・プルシア(King of Prussia) —— にオープンする。
「ネットフリックスは25都市で50以上の体験を提供してきましたが、ネットフリックス・ハウスはその次の世代を象徴するものです。この施設では、ネットフリックスの人気ストーリーを常に変化し続ける、思いもよらない新しい方法でお届けします」とネットフリックスのCMO(最高マーケティング責任者)マリアン・リー(Marian Lee)氏は語った。
独自の知的財産を没入型の体験に変えるというコンセプトに聞き覚えがある?
そう、これはディズニーのやり方だ。
ウォルト・ディズニー・カンパニーはアニメスタジオとして始まったが、1955年にカリフォルニア州にディズニーランドを開園し、テーマパークに進出した。それ以来、世界中にテーマパークを展開している。他にも、クルーズ船やリゾート、住宅用不動産コミュニティーといった体験も手掛けている。
アメリカのフロリダ州にある、ウォルト・ディズニー・ワールドのマジック・キングダム。
Joe Burbank/Orlando Sentinel/Tribune News Service via Getty Images
テーマパークはディズニーにとって"稼ぎ頭"だ。テーマパークを含むエクスペリエンス部門は、2023年に320億ドル(約5兆1100億円)の収益をもたらした同社最大の収入源だった。
一方、ネットフリックスも2023年に約320億ドル稼いだ。
利益を増やす方法を模索しているネットフリックスが、ディズニーを"お手本"にするのは驚くことではない。2019年のカンファレンスでネットフリックスの共同創業者リード・ヘイスティングス氏は、同社はディズニーを尊敬していると語った。
ただ、メディア・リテール分野のアナリストたちは、ネットフリックスはディズニーのやり方を手本にしているものの、最終的な結果は異なるものになるかもしれないとBusiness Insiderに語った。
ストリーミングの枠を超えて
Zeta GlobalのCEOデビッド・A・スタインバーグ(David A. Steinberg)氏は、これを「クリック&モルタル」と呼ぶ。オンライン空間と現実世界を融合させたいという消費者の願望だ。
Zeta Globalが集めた消費者データからは、「経済活動調査の大半はインターネット上で行われますが、経済活動の多くは依然として現実世界で行われている」ことが分かったとスタインバーグ氏は話している。
これはディズニーが数十年をかけて、テーマパークやその他の体験を運営する中で完成させたレシピだ。2009年の映画『プリンセスと魔法のキス』をテーマにしたディズニー・ワールドのライド「ティアナのバイユー・アドベンチャー」は、その最新例だ。
ティアナのバイユー・アドベンチャー。
Orlando Sentinel/Getty Images
ネットフリックス・ハウスは会員を引き付けるだろうが、ResonateのCMOエリッカ・マッコイ(Ericka McCoy)氏は、新たな視聴者を獲得する可能性も見逃せないと語る。そこには現実世界とのつながりを強く求める若い世代も含まれる。
「ネットフリックスにとっては、ネットフリックスの視聴者だけでなく、新しいものを探している映画好きのかなりの割合を取り込む、本当に面白い体験を作り出す大きなチャンスです」とマッコイ氏は指摘する。
「彼らはコンサート派の視聴者を取り込むこともできるはずです」
ネットフリックスがショッピングモールを救う?
ショッピングモールの閉鎖された店舗。
SOPA Images/Getty Images
ネットフリックスがショッピングモールに投資するのは、「小売業の崩壊」を告げるニュースの見出しと矛盾するように見えるかもしれない。しかし、ショッピングモールにはまだ稼ぐ余地があるとスタインバーグ氏は言う。
「ショッピングモールは確かにこの国の大部分で問題を抱えていますが、たくさんの客足を獲得するには非常に低コストな方法です」
スタインバーグ氏は、ネットフリックスは独立した店舗を構えるよりも、ショッピングモールに出店した方がより多くの人が訪れるだろうと語った。
その上でガレリア・ダラスとキング・オブ・プルシアについて、「以前より数字が落ち気味とはいえ、アメリカで最も大きく、最も利用客の多いショッピングモール」だと指摘した。
マッコイ氏は、こうしたショッピングモールで提供される物理的な空間は「かさばる体験」にぴったりだとBusiness Insiderに語った。
ウォルト・ディズニー・ワールドにある「ハリウッド・スタジオを想像してみてください」とマッコイ氏は続けた。
「ステージを作ることも、セットの中に入っていくような没入体験を提供することもできます。これは狭い空間ではできないことです」
ディズニー・ハリウッド・スタジオ。
Orlando Sentinel/Getty Images
一方、OptiMine SoftwareのCEOマット・ヴォーダ(Matt Voda)氏は、ネットフリックス・ハウスがショッピングモールにできることは、集客の中核となるアンカーテナントの入れ替えを図るショッピングモールの運営会社にとって、"勝利"かもしれないと話している。
「これはより高級になりがちな専門店などを避ける方法の1つです。ショッピングモールの運営会社は、消費者を呼び込むことに飢えていますから」とヴォーダ氏は指摘した。
その上で、自社のデータからファンの興味や情熱が分かる —— それがビジネス上の決断の助けになることもある —— ことから、ネットフリックスには「分析面で優位性」があると同氏は付け加えた。
「(ネットフリックスは)どこにどれだけの熱狂的なファンがいるか分かっているので、小売業における大きなリスクであるさまざまな変数を減らすことができるのです」
「ネットフリックス・ハウス」の次は「ネットフリックス・ワールド」?
3人の専門家はいずれも、ネットフリックスにとって、ネットフリックス・ハウスはさらなる没入型の時代の到来を告げるかもしれないが、"結末"を知るにはまだ早すぎるとBusiness Insiderに話している。
「これはネットフリックスのエンゲージメントと認知度を高めるための単なるブランドプレイなのか、それともテーマパークのような、より大きなビジネスチャンスなのか? (ネットフリックスは)これを試し、何年も続くかどうか確かめる必要があるとわたしは思います」とヴォーダ氏は語った。
スタインバーグ氏は、テーマパークから離れて、ネットフリックスが体験をより豊かにすることで、期間限定ではない常設の施設を拡大したらよいのではないかと提案した。
「それはライドかもしれないし、バーチャルな体験かもしれません。テーマレストランをオープンするかもしれません」とスタインバーグ氏は話した。
ヴォーダ氏は「時がたてば分かるでしょう」と付け加えた。