kikiの日記

心動いたもの

今週のお題「家を売る」

大学生のとき、実家が売りに出された。

私が物心ついてから大学生になるまで、18年間を過ごした田舎の実家。

突然決まったことだったけど、理由は大きく2つだと思っていた。両親が離婚したことと、実家に住む人数が減ったこと(父親は長らく東京に単身赴任していたし、私が大学進学で上京するタイミングだった)。

実家がなくなるのは結構寂しかった。だけど、判断は両親に任せるしかなかった。当時私は東京の新生活に慣れるのに精いっぱいだったし、私がローンの支払いをどうこうできる訳でもないし。だから実家のことについては考えないように、関心を向けないようにして、なるべく寂しさを感じないようにしていた気がする。

実家の片付けは地元に残っていた家族や親戚にすべて任せてしまった。最後空っぽになった実家をこの目で見ることもなかった。

あれから10年近くが経っている。

今、地元に帰省するときは実家の近くの祖父母の家で過ごす。現在の祖父母家は、親戚たちがたくさん訪れていつも賑やか。だから帰る家がなくなってしまった…という話ではないし、不自由もしていない。

だけど、今回ブログを書くのをきっかけに、あのときのことを振り返りたいと思った。父親が何を考えていたのか、知りたいと思った。

今や家族の4分の3が都心で暮らしていて、定期的に会ってご飯を食べるから、そのときにいろいろと聞いてみることにした。焼肉を一通り食べ終えて、締めのスープでも注文しようかというタイミングで「ブログに書きたいから、家を売ったときのことを教えてほしい」と切り出した。

 

最初の質問「なんで実家を売ることにしたの?」

父「1番の理由は、自分が東京にいるから。住む人も減っていたし。あとは、東京の家賃と(実家の)ローンと両方払い続けるのが厳しくなったからだね」

これは私の推測どおり。

次の質問「家を売って儲かったりした?」

父「いや、全然。買った時と、売った時の値段が全然違った。当時(総理大臣の)小渕さんが、家を建てることが経済対策だと言ってたような時代で、固定金利が2%とかだった。たぶん27歳とかだったけど、家を建てたいモチベが強かったし、全然建てられた。」

なるほど~、時代だ。27ってだいたい今の私の年齢と同じですけど…家を買おうなんて考えたことないよ。

父「でもすごい立地が良かったよね。周り田んぼに囲まれてて、近所のこと気にしないで騒いでたじゃん。毎週庭でバーベキューしたり、ビニールプールで遊んだり、テント張ってキャンプしたり。テント張ってもみんな結局寝るときは家の中に入っちゃって、自分だけテントで寝たりしてた(笑)自分の家なんだけど、別荘みたいな場所だなと思ってたよ。」

そうなんだよ、すごい良かったんだよあの家!!!

庭からの眺めは一面の緑。田んぼと、遠くにそびえる山々。住宅街ではあったが、なぜか私の家だけ他の家と距離があって。父の言う通り騒ぎ放題だった。

 

私「家の隣の田んぼだった土地、余ってるから使っていいよって言われて畑をやらせてもらったりしたよね」

父「やってた。もともと田んぼだったから耕しても水捌けがすごく悪くて、雨降ったら終わりだった。トウモロコシを育てたけど、2~3本しかできなかった。あと、せっかくできたと思ったらハクビシンに食われたし。他にも里芋とか、ネギとか育てたかな~。大変だったから、結局その土地は別の人に譲っちゃったね」

私「で、いい立地だったから売れるのが早かったよって話?」

父「そうだね。すごい早かった。売るときは不動産屋に相談したんだけど、魅力をアピールして相場より高い値段で売ったほうがいいと言われた。壁が傷んでいたりしたから、リフォームしたほうが良いって言われて、100~200万かかったけどやったよ。」

え~~~そうだったの。

父「庭でプールやって、濡れたまま家に入ってたりしてたでしょ。だから床がそこだけ傷んじゃったりしてたのを張り替えたり。たしかにすごくキレイになったから、リフォームしてもらってよかったなと思ったよ。」

そんなことしてた���んて、全く知らなかった。リフォームの効果もあって?家は速攻で売れたとのこと。土地の値段は爆下がり、家自体の値段も買ったときの半額くらいではあったらしいが。

父「近所に、アパートあったでしょ。あそこに住んでいた人が、俺たちが庭でバーベキューしたりしてるのを見ていて、あんなところに住めたらいいな~とずっと思ってたんだって。その人が買ってくれた。相場より少し高めの値段で出したけど、値引きもなく即決だった。」

え…そうなの。それは…めちゃくちゃ嬉しい。そうだったんだ。

私「これが最後の質問。売れたとき、どう思った?」

父「安心が大きかった。お金の問題が心配だったから。あとは買ってくれたのが近所の人で、知らない人じゃないのが安心できた。買ってくれた人とも直接話したけど、庭がいい感じなんで使ってやってくださいって話をしたよ(笑)」

 

その後も、父とは実家の思い出をいろいろと話した。

周りが田んぼに囲まれてたから私がよく自転車で落下してたとか、私が家の中から鍵をかけてしまって、開かなくなって父が会社から駆けつけた話とか(覚えてない…)。

2階に行く前に必ずリビングを通らなければいけない家の造りは、父のこだわりだったということとか。

あと、実家からは、夏祭りの打ち上げ花火が見えた。初めて知ったけど、父の実家(祖父母宅)も夏はベランダから花火が見えたのだそう。父は今も、隅田川の花火がベランダから見える部屋に住んでいて、花火が家を選ぶときの基準になっているのかもしれないと話していた。

 

父「いい家だったから、ちょっともったいないと思ったけど、しょうがないね

 

私もずっともったいなかったと思っていた。だけど、しょうがなかったね。

同じ気持ちだったって知れたし、両親は、私のように逃げずにしょうがなさに向き合ってくれていた!知らなかったいろんなことを知れて良かった。今度帰省したときには、実家の様子を遠くから眺めにいってみようかな。

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致死量の恋バナ

最果タヒ百人一首という感情』

おそらくこの本は発売後すぐに購入したはずで、だとすると、5年ぐらいは積読していたことになる。

詩人の最果タヒさんが『百人一首』をひとつずつエッセイで紹介してくれる、つまり、最果タヒさんのエッセイが100本収録された一冊。

私が詩に興味を持ったきっかけは最果タヒさん。恋愛モチーフの作品が多い印象。詩だけじゃなくエッセイが漏れなくおもしろい。タヒさんの、「好き」の感情をとことん言語化してやるぞという姿勢とか、「なぜ好きか」を表現できることこそ文章を書く醍醐味ではないですかという思想に、私はすごく共感する。

最近はじまったこの新連載もアツい。本気の「好き」を伝えるためのお手紙講座。

spin.kawade.co.jp

君がため 春の野に出でて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ

タヒさん訳:「春の野原にでかけて、あなたのために若菜をつむ、そのとき、わたしの袖に雪が次々おりてくる。」

懐かしいよね百人一首。ぜんぶなんとなく覚えていた。

例えばこの歌にタヒさんが寄せたエッセイを少し引用すると

ただ、感動を伝えたかったんじゃないだろうか。「きみ」のために、春の野へと出ていった。目の前の緑に夢中になり、つい最近まで冬だったことも、少し肌寒いことも、忘れてしまっていたのかもしれない。その中で雪に出会うことができた。その、感動を。それが、「寒い中、それでもあなたのためにつんできたんです」というアピールにとられるということすら、きっと思ってもみなかった。この歌の、自らの眼差しだけですべてをきりとるような形には、「きみ」しか見えていなかった、緑しか見えていなかった、春しか感じていなかった、そんなまっすぐな視線を感じる。どうしようもなく。

良い!『この瞬間を詠みたい』という衝動、千年という時を乗り越えてきた強い感情と言葉、恋をしている人間のおかしさや愛しさは千年前も今もそんなに変わらないなと思わせてくれるタヒさんの解説たち。

私は恋バナが好きだし、人と恋バナしたすぎる。恋をして、突き動かされて、周りが全く見えなくなってる人のことを、愛情たっぷりに全肯定で超かわいく描いている映画や小説が好みです。

この本は、最果タヒさんの恋愛エッセイ100本ノックという感じなので、私の恋バナ欲が非常に満たされるし、続けて読みすぎると過剰摂取で疲れてくる。致死量の恋バナを浴びたいときにおすすめ。

商売繁盛!元祖電波屋!

dempagumi.tokyo

でんぱ組.incは2025年にエンディングを迎え、16年にわたる歴史に幕を閉じます。

発表されたのは1ヶ月以上前、それなりに衝撃だった。でんぱ組は中学生の頃から好きで応援していたし、間違いなく人格形成への影響も大きい。でんぱ組の活動が終わってしまうことについて、言いたいことがたくさんある気がするけど、全部を言葉にするなんてことは到底できないんだから、とりあえず気負わず、何か書きはじめてみようと思いました(来週でんぱ組のライブに行くし、2025年まででんぱ組は続く!)

エンディングが発表された直後、Xでは「#あなたのでんぱ組はどこから」というハッシュタグが盛り上がっていた。私はどこからだったか?思い返すと、たぶんこのMVです。

www.youtube.com

私が田舎の中学生だったころ、思春期をこじらせた多くのキッズがそうしていたように、「友達が知らない、私だけ良さがわかるかっこいい音楽」を探し求めてYouTubeを見漁っていた。そのときにたどり着いたMVのはず。

アイドルなのに、当時流行っていたAKBやももクロと全然違う、オタクっぽい子たちだなぁと思った記憶(実際にすごくオタクだった)。6人それぞれ個性が強くてバラバラ、ビジュアル的にも全員「作画が違う」感じが魅力的だった。

メンバーのSNSをフォローして日常的に投稿を追うようになってから、特に大好きになったメンバーが「夢眠ねむ」ちゃん(ねむきゅん)。見た目の可愛さだけじゃなくて、中身に憧れた。いろんな物事が好きで知識が幅広くて、自分の意見を常に持っててそれを表現するのが上手。ねむきゅんきっかけで好きになったもの、挑戦したことが本当にたくさん、たくさんある。

高校生になってから、地元の小さなライブハウスにでんぱ組が来てくれることになって初めてライブに行った。オールスタンディング、すし詰めの会場、ファンのオタ芸に圧倒された(女性専用スペースがあったおかげで観やすかった)。そのとき初めてメンバーみんなと握手ができた、一瞬の出来事だったけど全部覚えてる。

あと高校生のときは、DJねむきゅんに憧れてDJのマネごとをしたりとか(観客は友達2人だけだった)、当時組んでいたガールズバンドでアイドルのマネごとをしたりしていた。

大学生になると同時に上京。いつでもライブに行けるようになったのに、他にも関心ごとが増えたせいか逆にあまりライブに行かなかった(ちょこちょこ行ってはいたんだけど、毎回、久しぶりだな~と思っていた)。

でんぱ組発祥のライブバー「ディアステージ」は東京・秋葉原にある。

高校生のころ、東京に遊びにいったときに撮影したディアステージ
(私のInstagram初投稿写真)

秋葉原」を自分にとっても特別な場所にしたいと思って、大学時代は秋葉原アミューズメント施設でバイトしていた。同僚はアニメオタク・声優志望の人ばかりだった(私は特にアニメが好きとか詳しい訳じゃなかったのでやや浮いていた)。

そんな日々を送っていた2019年。ねむきゅんがでんぱ組を卒業することになった。

ディアステージで卒業イベントが開かれたんだけど、その抽選に運良く当たった。今まで何度も外観の写真だけを撮影してきたディアステージの中に、初めて入れることになった。イベントではねむきゅんのライブを最前ドセンで観れただけじゃなくて、直接お話もできた。真横でねむきゅんがニーハイを直していたし、その際肩が触れていた。

こんなに良い思いをさせていただけたから、もう一生オタ活ができなくてもいいと思ったし、この先私は、サイリウムを持ってアイドルのライブに行くこととかきっと無いんだろうなと思っていた。

そんなことなかった。

その後、でんぱ組はメンバー卒業・追加を何度も繰り返し形を変えていった。でも、ずっと変わらずに「でんぱ組」だった。全ての過程にドラマがあって、ワクワクして、見過ごすことができなかった。新曲が出るたびに、やっぱり「曲が好き」と思った。

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さすがに2022年冬。この「オーギュメンテッドおじいちゃん」という曲がかっこよすぎて、衝動的にサイリウムを持ってライブに行ってしまった。特典会で、古川未鈴(みりん)ちゃんと写真を撮った。

意外と簡単に会いに行けてしまうんだということと、今のでんぱ組で誰かひとりメンバーと話せるとなったとき、私が選ぶのはみりんちゃんなんだなということがわかった。みりんちゃんは言わずもがなでんぱ組の創設メンバー。結婚して、子どもが生まれてもでんぱ組を続けるという選択をしてくれていた。本当にかっこよくて凄い。機会を見つけては会いに行って、いつしか1番の関心は「みりんちゃんがいつでんぱ組を卒業してしまうのか」ということになっていた。

だから今回、みりんちゃんが卒業するんじゃなくて、でんぱ組が終わる(おそらくみりんちゃんがそう決断したのだ)ということが、私にとってはすごく腑に落ちたというか、安心できる出来事だった。

で、その後に出た新曲。「商売繁盛!元祖電波屋!」。タイトルだけでどんな曲か想像ついたし、きいてみたら大体合ってた。

www.youtube.com

そう、THE・でんぱ組という感じの曲だけど、一生これでいい。

曲が出る前、でんぱ組プロデューサーもふくちゃん記事(↓)を読んでたのもあって…「でんぱ組.incが『元祖』なんよ」ってタイトルで言い切っててニヤニヤしちゃった。

でんぱ組がエンディングを迎えてしまったら、こうやって「新曲」でいちいち興奮できることもなくなるんだなと思うと少しだけさみしいけど…いやいやでもさ、2025年までは続くんだし、来週ライブ行くし。

…意外といっぱい書いてしまった!

『みどりいせき』大田ステファニー歓人 読書メモ

『みどりいせき』という本を読んだ。

あれは春のべそ。まぁ、そんなわけないし、もしそうなら、みんないつか死ぬ、ってことくらい意味わかんないし、わかんないものはすこし寝かせたい。けど今は眠ってる場合じゃないし、ってなると、目が赤いのも鼻すすったのもたぶん春の方に吹いてった風のせいで、だって強い気流が砂ぼこりを巻きあげたんなら普通に目に入んだろうし、その汚れを落とすための涙が鼻へまわったんなら自然にすするし、流れた雲が太陽を隠して、ふと顔に影が落っこちたんなら表情だって見づらくなんだろうし。

仕事帰りの電車で読み始めて、何が書いてあるのか最初全然わかんなかった。読めはするんだけどうまく頭に入ってこない。たぶん「社会」的なものから離れたこの人だけの文体だし日本語。
ただ、読み進めるうちに脳みそがリズムに乗ってくるし癖になる。あり得ないほどディープな青春小説。バイブス一辺倒。怖いものみたさで最後まで読み切ってしまった。めちゃくちゃ凄い小説!

『みどりいせき』は大田ステファニー歓人さんのデビュー作で、すばる文学賞三島由紀夫賞を受賞している。作者は、この物語を書くためだけに最初の筆をとってくれたんだろうねと思える、デビュー作のエネルギーって最高だ。

なんかいろんな記憶をガ��ャガチャと思い出したりとか、いつまで自分は、自分のことばかり考える生活を続けて、どういうタイミングでそれを辞めたり辞めなかったりするんだろうとか考えながら読んだ。

私が好きなフィクションのシチュエーションで「深夜の学校」(本当は人が入っちゃいけないし、誰も居るはずのない空間で巻き起こるヤバいこと)があるんですけど、その最高峰という感じでビビった。

友達に薦められて読んだけど、これを薦めてくれたことがとても嬉しいです。

『かなわない』植本一子 読書メモ

『かなわない』

写真家で文筆家で二児の母、植本一子さんの日記・エッセイ集。

今日どこへ行った、何を買って、食べた、そのときこう思った。まさに日記、という感じの文章だけど、どこか温かくて心休まる。ずっと読んでいられる。

日記は2011年からスタートする。震災についての記録が多い。植本さんはお子さんが2人いる、毎朝保育園の送り迎え、ご飯の準備、寝かしつけ、大変そうだなぁ。と読み進めていて、そういえばこの日記どこまで続くんだろう?とKindleの進捗バーを見たらまだ20%くらいだった。待って……4000ページあるよ!?となりましたが、移動時間や日々の持て余した時間にコツコツ読み進めました。この日記は植本さん自身のブログにリアルタイムで公開されていたものらしい。『自分のダメなところをさらけ出している文章。なかなかここまでありのままを、包み隠さず書ける人はいない』というように紹介される事が多いはずだし、私もそのような紹介文に触れたのがこの本を知ったきっかけだった。

日記が2012年に差し掛かったあたりで?その『さらけ出し』度合いが強くなっていく。植本さんが育児に悩むことが多くなると同時に、写真家の仕事もステップアップしていく時期で、前進するワクワク感があるのに、理想どおりできず劣等感で塞ぎ込む、あるいは周りの人に当たり散らかすというようなことが結構あって、私の人生とは全然違うのに、ずっと「わかる」し、憧れるし、こういう日々を過ごした先に、どんな結末が待っているんだろうと気になって読まされてしまう。

最後(2014年)まで読み切ったけど、まさか、まさか、こんな展開が待っているとは。いや、3年、4年?もあれば、何もかも変わってしまうよな。特に植本さんのように、自分を見つめることができて行動力のある方なら。おこがましいけど私と似ているなと感じる部分も多く。終盤、植本さんが心理カウンセリングを受ける日々の記録がある。カウンセリングはチャット上で行われてるから、おそらく先生の言葉がそのまま正確に引用されてると思うんだけど、それがもう、私にもガンガンに響いてしまって…読了後、まるで私がカウンセリングを受けた後みたいにスッキリした気持ちになるなんて、読む前は想像もしてなかった。(実際に受けたことはない)

「自己肯定感」とか「依存」とか、現代のメンタルヘルスについて格言めいたものをSNSでよく目にする。少なくとも私が触れているSNSアルゴリズムでは。大抵「自己肯定感」は高いほうがいいし、「依存」はしないほうがよく、依存先を一つじゃなくて複数持っておくことが自立という事なんだよ云々。点で散らばっているそれらの格言たちと、本の中の先生が言ってることは大きく変わらないのだけど、SNSの不特定多数に向けたバズるための言葉じゃなくて、目の前の『あなた』のために紡いだ言葉だから、こんなにも説得力や重みが違うんだなと思う。

今このタイミングで出会えて良かったな〜と思う本でした。

カウンセラーの先生の言葉にはマーカー引きまくりだったのですが、ひとつだけ引用。

──人と同じを目指すんじゃなくて、人と違うを目指してください。そこにあなたの価値が生まれるんです。あなたは本当のことを話せば人から好かれないと本気で信じていますね。逆です。マニアックなあなたをアピールしなければ大事な人に素通りされちゃうよ。

今2024年なので、この日記の結末から10年経っている。植本さんの生活や考えていることなんかはまた大きく変わっているんだろうと思う。他の著書も���ひ読んでみたいと思います。

日記を書く習慣はないけど、自分が何考えて生きてたかってきっと忘れてしまうから残しておくの良いよねと思って、何となくiPhoneのメモを見返していたら、2018年に書いた400文字くらいの謎の短編小説的なものを発掘。

自分が書いたものとは思えない、何かの本から引用してメモに残してた?と思ったけど、引っかかるところがあって、じっくり記憶を辿ったら、思い出した。完全に実話だし、私が考えたことだし、私の文章だった。こんな事、あったわ〜!思い出せた。残しておいてくれてありがとうな。

しかしそれを公開する勇気は…出なかった!(ちなみに、好きな人から深夜にLINEが来たというだけの内容)

『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』花田菜々子 読書メモ


やばい。良すぎた。

こちらの良い記事をきっかけに読みました。

yoi.shueisha.co.jp

 

『出会い系サイト』だからやましい本なのかと思うかもしれないけどそんなことない。
夫と住んでた家を飛び出し深夜のファミレスでひとり絶望していた花田さんが、興味の赴くままに行動していたら本当に好きだと思える事を見つけて、好きな理由の言語化もゴリゴリ進んでそれを仕事にもできて、人生を大きく前進させるサクセスストーリー。非常に気持ちがいい。

読みながら私の中に隠れた欲望まで浮き彫りにされていくようで、読んだ後は、何か今すぐに行動を起こしたくてしょうがなくなるような、こういう本は久しぶりというか初めてだったかもしれない。
熱が冷めないうちに花田さんに直接お会いしたいと思ったし、あわよくば本をおすすめされてみたい。

 

花田さんが感じた「会ったばかりの人と話してその場で本を薦める」難しさと楽しさと、説明がつかない高揚感っていうのは、やった事なくてもなぜかすごく共感できたし、私が今の仕事を選んだ潜在的な動機でもある気がした。やる気が出た。

その人のことがわからないと本はすすめられないし、本のことも知らないとすすめられないし、さらに、その人に対して、この本はこういう本だからあなたに読んでほしいという理由なしではすすめられないんじゃないかとも思う。
……

(街中のショーウィンドウに飾られている)ドレスを自分が着ることがなくても、誰かが『あなたはこのドレスが似合うような素敵な人だよ』と言ってくれたら、そのドレスはガラスの向こう側に存在しただけで私に価値をもたらしてくれる。同じことを本でやればいいのだと思った。

そして、花田さんが「好き」を表現するときの文章がいちいちえげつない素晴らしさ。金言だらけで疲れた。

何かしたいけど小さな一歩を踏み出せないでいる人が、この本を読んで猛烈に背中を押されて、気づいたら知らない遠くの場所にたどり着いたりしたらいいと思いました。

ヴィレヴァンに置いてありそうな本だと思ったら、花田さん自身がヴィレヴァンの店長をやっていたという。

とりあえず本の中で花田さんが薦めていた本を読み漁りたいと思います。

『深く、しっかり息をして』川上未映子 読書メモ

ちまちまと長い時間をかけて読んだ、川上未映子さんのエッセイ集

深く、しっかり息をして

エッセイというものが文章の中で1番好きかもしれない。

「頭の柔らかい人になりたい」という欲求を1番手軽に満たせるからだと思う(なれるとは言っていない)。ファッション雑誌を眺めていれば、お買い物してる気持ちになれるのと同じ。

しかも川上未映子さんの書いたものだったら尚更。

2011年から2022年。小説を書きながら出産・育児という変化もあった川上未映子さんの約10年間、雑誌Hanakoで連載を続けていたエッセイの中から80本が抜粋されている。

タイトルのとおり、しっかり息を吸うことの大切さを教えてくれるエッセイもある。なんか調子があがらないときって、呼吸が浅くなっていることが多いという気づき。川上未映子さんがヨガをやっているとき、深い呼吸を意識するのとしないのとでは、汗のかきかたが全然違うって。それを読んでから、今、自分息できてる?ってふとしたときに意識するようになった。

 

最近は専ら電子書籍派なんだけど(通勤時間に読みやすいから)、電子書籍って、蛍光ペンで色つけたり付箋を貼る的なアクションができてそれらを後でまとめて見返せるのが便利と気がついた。

 

私が大学1年生くらいの頃、出先でハンカチを貸してくれた友達に対して、「女子力ある」て言ったら、「常識力♪」てさりげなく返されたことを今でも時々思い出す。という事を、この本読んでて思い出すなどした。

あれから10年くらいが経ったけど、当時のあの子は私の知らない世界をたくさん知っていたんだなって思う。最近流行りのドラマ「不適切にもほどがある!」を批判してる人を批判してる人、にモヤッとする。「本音なんかどうでもいい、大事なのは建前だ」という本の中の言葉が今の私にすごくしっくりきた。

10年なんてまたすぐに経つ、いっぱい勉強していっぱい冒険したい。